レコードの人気復活、10年で生産枚数10倍
2020年04月07日放送
文房具の今世界を塗り替える日の丸文具
読売新聞 3月17日掲載
ラジオ版New門 (文字起こしバージョン)
「この門を開けばニュースの世界がよりくっきり見えてくる」ラジオ版NEW門ニュースの門。今日は、「文房具の今」に関する内容です。
先月17日掲載の、「世界を塗り替える日の丸文具。ガラパゴス化が功を奏す」についてピックアップしてお伝えしていきます。
日本の文房具がアツいっていうお話なんですかね?
そうなんです。
新入生を始め、新年度は、新しい文具をそろえるにもいいタイミングですけれども、少子化とオフィスのペーパーレス化が進んで、文具業界を取り巻く環境は厳しくなっているように見えます。
はい
そんな中で生き残りのヒントを探して、文具メーカーはいま、しのぎを削っているんです。
そうなんですね。確かに、この日本の文具って、ファンがいるほどユニークな商品が多いですもんね。
そうですよね。例えば、図表や表が、図形や表が描きやすいように、罫線にドット(点々)が付いたノートとか、芯がとがり続けるシャープペンシル
あー。使ってます。
とかありますよね。あと、角が多くて細かい部分を消しやすい消しゴムとか、各社ユニークな新商品を次々に発売していまして、安いボールペンが1ダース単位で販売されることが多い海外とは対照的なんです。
はい
また、文具に関心の高いユーザーも多くいます。SNSにはカラフルな筆記具で書いた日記とか手帳の写真が投稿されています。
文具ファンの女性は、「文具女子」とも呼ばれますけれども、去年の12月、東京で開かれた展示会「文具女子博」には、およそ3万8000人もの文具ファンが来場しました。
すごいですね!
100社以上のブースが並んで、ファンが限定商品を目当てに行列を作ったそうです。
へー。そう話を聞くと、日本の文具業界も盛り上がっている印象があるんですけれども、
生き残りをかけた苦境に陥っているっていうことなんですね。
そのようなんです。
日本で相次いで登場する、高機能高単価の文具は、それぞれのメーカーの懸命な生き残り策でもあるんです。
はい
日本鉛筆工業協同組合の統計によりますと、おととしに日本国内で生産された鉛筆は、
2億764万本
おー (○≧Д≦)
と、数だけ聞くとすごそうなんですが、
そうですね
30年前の1/3以下に落ち込んでいるんです。
そうなんですか!
鉛筆のヘビーユーザー・つまり小学生の数が、4割近く減ったことが大きいほか、
なるほど!
企業や役所で進むペーパーレス化の影響もあるようなんです。
確かに紙を減らす節約する動きっていうのは進んでますよねー!
はい。そんな日本国内の厳しい環境の中で海外に活路を見出す文具メーカーも増えています。先駆的な存在の一つが、「ぺんてる」です。
実は、1960年代、アメリカの見本市で配布した試供品のサインペンが、たまたま当時のジョンソン大統領の手に渡って、書き味や、裏映りしない特徴が気に入ったんでしょうね。
ジョンソン大統領に愛用されたことが、世界的ヒットのきっかけになったというエピソードもあるんですけれど、
無重力でも書けるということで、その後、アメリカ航空宇宙局・NASAにも採用されました。
すごい!
ぺんてるは 現在、売上高の6割を海外が占めているそうです。
6割なんですね、海外が。
面白いエピソードですけれども、日本の文房具が海外で認められるっていうのは嬉しいですね。
そうですよね。海外に活路を見出すといえば、少し前に話題になった、文具大手のコクヨが筆記具大手のぺんてるに対して仕掛けた、敵対的な買収劇がありました。
結果的にコクヨの株式取得は過半数に至らず、ぺんてるを子会社にはできませんでした。
コクヨは国内市場の比重が高いので、ぺんてるを取り込むことで、海外市場での筆記具の展開を強化する狙いがあったともみられているんです。
生き残りのために海外にうってでたい気持ちがあるようですね。
そのようなんですね。
そんな海外で認められた、近年の文具で言いますと、パイロットコーポレーションのボールペン「フリクションボール」が挙げられます。
あー使ってますよ!
書いた字をペンの後ろのラバーの部分で消すと消せるものですけれど、温度によって色が変わる特殊なインクを使っていて、実にこれ、30年に及ぶ研究の成果だそうです。
そうなんですね。これ、どうして、海外でヒットしたんですか?
気になるでしょ?
それが、ヨーロッパでは、生徒が授業で万年筆とかボールペンを用いるのが一般的でして、かつては、「筆記用」、「消す用」、「上書き用」の3種類のペンがヨーロッパでは必要だったそうです。
へー。
ところが、フリクションボールがヨーロッパで先行発売されると、これまで3種類必要だったペンが、消せますから、1本で済むことになって爆発的なヒットとなって、ヨーロッパの授業風景を変えたとまで言われたそうです。
勢いよく売れた商品といえばですね、三菱鉛筆の「ジェットストリーム」。
こちら油性インクを使いながらも滑らかな書き味も実現して、字角の多い漢字も書きやすいので、東アジアを中心に世界で年間1億本以上売り上げる「お化け商品」に成長しました。
お化け商品!
こうした独創的な、高い付加価値を持つ商品は、のメーカーが、縮小している国内市場で、もまれにもまれて、技術とアイデアを競い合ったからこそ生み出されたともいえそうなんです。
厳しい環境で鍛え上げられた文具なんですね。
そうなんです。鍛え上げられたわけですね。
携帯電話や家電は国内市場にあわせて高機能を追求するあまり、世界標準の形から外れて、「ガラパゴス化」日本独自の物になってしまって、結果的に国際競争に敗れてしまったという苦い経験があるんですけど、文房具の方は、ガラパゴス化が功を奏した珍しい業界。とも言えそうです。
そうなんですね。その業界によってもどう生き残るかという戦略は様々なんですね。
そうなんです。でも文房具はこれがうまく働いて、ピンチをチャンスに変えた。とも言えそうですね。
おもしろいですねー。