データ消しても 悪事は消せず
2020年10月27日放送
条例「ゲーム条例」 時代を先取り?
読売新聞 10月10日掲載
ラジオ版New門 (文字起こしバージョン)
「この門を開けばニュースの世界がよりくっきり見えてくる」ラジオ版NEW門 ニュースの門です。今回のテーマは「条例」です。NEW門今月10日掲載の「ゲーム遊びは1日1時間、県がルール…各地にユニークな条例」についてピックアップしてお伝えしていきます。
そういえば、ゲームに関する条例が話題になりましたね?
なりましたね。子どもがゲームで遊ぶ時間を1日1時間とするいわゆる「ゲーム条例」が、今年4月に香川県で施行されて賛否を呼びましたけれども
はい。
実はこれにとどまらず、自治体がつくる条例にはユニークなものが少なくありません。
うーん。
今回は、どうして風変わりなご当地ルールが生まれるのかというお話です。
ご当地ルールって、
うーん。
きっと昔からいろいろあったんでしょうね?
まさにそうなんですよ。たとえば、「けんかをしたら2人とも死罪」とか、「酒に酔って殿様の前に出て、あれこれ言ってはならない」といったルールが実際にあったんです。
だいぶ厳しめなルールですけれども
そうですよ。
これもご当地ルールなんですか?
はい。これは戦国大名たちが領国支配のためにつくった独自の決まり「分国法」の一部なんです。
はい。
こうした動きは江戸時代にも引き継がれて、各地の大名は、幕府が公布した刑罰に関する「自分仕置令」という法令に基づいて、実に多様な「藩法」というもの、これ、藩独自の法律を設けていたんです。
はい。つまり地域ごとのルールを定めてきた長い歴史があるわけですねー。
そうですね。条例は都道府県や市区町村が、地域での政策の実現などを目指してつくるもので、これ、憲法や地方自治法に基づいています。
はい。
憲法や地方自治法と条例の関係は、さきほどの自分仕置令と藩法に似ています。
国のルールと地方のルールの関係ということで
はい
そんな条例ってどうやって決められるんですかね?
条例を提案できるのは、首長や議員です。制定には議会の議決(同意)が必要で、懲役とか罰金などの刑罰を盛り込むこともできます。
はーい。
で、さらに、一定数の署名が集まれば、住民が制定や廃止を求めることも可能なんです。
はーい。では、香川県のゲーム条例というのは、どういう流れでできたんでしょうか?
ええ。このゲーム条例の正式名称は「ネット・ゲーム依存症対策条例」です。
はい。
直接のきっかけは地元メディアが昨年1月に始めたキャンペーン報道で、県内世論は盛り上がって、依存症啓発の出前授業とか、児童向けのアンケート調査を行うなど独自の対策に乗り出す教育委員会や学校も出たそうなんです。
はい。(。-`ω´-)
で、この条例では18歳未満を対象に、遊ぶ時間のルール作りなどを各家庭に求める内容で、今年の3月、県議が提案をして、賛成多数で可決をされました。
ところが、賛否両論が巻き起こったわけですか?
そうですね。条例の素案段階から「家庭への介入」といった批判の声があったそうで
はーい。
条例づくりを主導した県議は「保護者から長年相談を受け、大きな懸案だった。遊ぶ時間も目安にすぎず、罰則もない」と強調しているんです。
はーい。ま、賛否は様々ですけれども、全国から注目を集めた、ということは確かですよねー。
そうですよねー。ところで、そんなユニークな条例は、地域ならでは事情を背景に生まれたものが多くありまして、ほかにも地域振興とか、地場産業のPRを狙ったものも目立っているんです。
はい。
たとえば、京都市の通称「清酒で乾杯条例」は、日本酒の普及促進を目的に制定されました。
はい
また、大阪府泉佐野市には、特産のワタリガニをPRするために、写真撮影時に顔の横でピースサインをつくる
はい。
「カニポーズ」を市民に求める条例というのもあるんです。
え―?乾杯とか蟹ポーズとかそんな条例もあるんですねー(笑)?
そうなんですよ、さらに。条例の中には、法律よりも先に社会のいろんな課題に対処してきた実績がある条例もあるんです。
はい。
たとえば、2002年に施行された、青森県板柳町の、通称「りんごまるかじり条例」というものは、
はーい。
これ、地元リンゴ農家らの「無登録農薬使用問題」を受けて生まれたものなんです。
はい。
農産物の生産から流通、消費までを遡って追跡できる「トレーサビリティー(履歴管理)」という考え方を取り入れて、
ええ。
生産者や農薬の使用歴などを把握できる仕組みを設けました。
はい。
この仕組みが、法律でコメに導入されたのは、この8年後なんです。
そうなんですねー。地方の条例が法律の先を行ったんですね。
はい。さらに、鹿児島県はストーカー規制法が施行される前の年、公務員の盗撮問題を受けて、ストーカーや盗撮の規制条例を制定しました。
はい。
ほかにも鳥取県では今年8月、新型コロナウイルス感染者への差別や中傷を禁じる条例が成立しています。
はーい。
地方自治に詳しい中央大学の佐々木信夫名誉教授は「条例は地方自治の根幹だ。地域の課題に素早く対処しようとする姿勢は評価できる。ただし、つくることが目的化するようでは意味がない。条例で何をするかが問われている」と話しています。
なるほど。ま、たしかに、その条例がどう活用されるか。っていうところが大切ですよね。
そうですねー。ご当地ルールの思想がのちの世で広まっているケ―スというものあるんです。
はーい。(ー_ー?)
例えば、犯罪者の追放というのが当たり前だった250年以上前に、熊本藩は
はい。
犯罪者の更生を重視して、土木工事などの強制労働に従事した者に対価を支払うという懲罰の仕組みを藩法で整えました。
はい。
これはまさに現代の刑罰制度の中核を成す思想にもなっています。
うーん。
ちなみに全国にある条例の数は、中央大学の角田篤泰教授の調査によれば、全国でおよそ34万本もあるそうです。
はーい。
ちなみに各地のユニークな条例が、遠い未来の人たちをうならせることができるのか、注目したいところです。
はーい、まあそういった各地に色々な条例があるということなんですけれども、先ほどの話のように、作るだけではなくて、
はい。
それをどう活用して、その地域の人たちの生活を、よりよくしていくか。っていうのが大切になってきますよね。
そうですね。さらにそれが関心を集めて、のちの世に広まったりとか、
うーん。
全国に広がるということも考えられるわけですね。
はーい。