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2020年06月02日放送

消費者裁判

消費者守る 大きな「一石」に

読売新聞 5月11日掲載

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ラジオ版New門 (文字起こしバージョン)

「この門を開けばニュースの世界がよりくっきり見えてくる」ラジオ版NEW門 ニュースの門です。今日は「消費者裁判」に関する内容です。ニュー門先月11日掲載の「消費者守る 大きな「一石」に」についてピックアップしてお伝えしていきます。

消費者のための裁判のお話ですか?

そうなんです。
「お店で買った商品に欠陥があった」とか、「詐欺まがいの契約を結ばされた」といった「消費者トラブル」。
被害者が自力で企業などの責任を追及するというのはなかなか難しいものです。

はーい。( ´︵` )

そんなときに、頼りになりそうな裁判の仕組みが、日本で2016年10月から始まっています。

大きな企業相手に消費者が裁判を挑むというのは、ほんとに大変なイメージがありますが、裁判に勝てば影響も大きそうですよね。

そうですね。1990年のアメリカの映画「クラスアクション」。邦題で「訴訟」という映画は、自動車の爆発事故で両足と家族の命を失った男性らの依頼を受けて、弁護士が大手自動車メーカーを訴えるというストーリーなんですけれど

はい。

これは、1970年代に、アメリカで実際に起きた裁判がモデルの法廷劇です。

はい。

映画では、名優ジーン・ハックマン演じる弁護士が、裁判への心境を
「巨人ゴリアテと闘うダビデだよ」と語っています。

まさに強敵に挑むっていう感じですね。

そうなんです。このセリフの由来は、旧約聖書の逸話です。
3メートル近い巨体で、よろいかぶとを身に着けた戦士ゴリアテに対して、少年ダビデが石投げひもで石を一つ放って、額に命中させて倒したという話なんです。

はい。

弱者が強者を倒す番狂わせを「ジャイアント・キリング」と呼びますけれど

うーん。

ハックマンは、ダビデのような気構えで大企業に挑んで、最終的に1億ドルもの賠償金を勝ち取るんです。

そうなんですねー。
被害を受けた消費者が裁判で勝つと、影響も大きいですよね。

そうなんです。実は、この映画のタイトル「クラスアクション」というのは、多くの消費者が受けた被害について、集団、つまり (クラス)の代表者が加害企業などに裁判(アクション)を起こす制度のことなんです。

はい

裁判に勝った勝訴判決の効果は、代表者だけじゃなくて被害者全体に及ぶんです。アメリカでは1960年代から盛んになってきて、似たような制度は、ヨーロッパやオーストラリア、ブラジルでも整備されてきました。

被害を受けた消費者にとってはありがたい制度ですよね。

はい

ところで、日本の裁判では、消費者トラブルの、この被害者のためにどんな仕組みがあるんでしょうか?

ええ。これ、被害者側が企業などを裁判で訴えるには、多くのお金とか手間がかかって、製品の欠陥を示す情報など、企業側の重要証拠を手に入れるのは難しいうえに

うーん。( ´△`)

負けてしまうと「費用倒れ」にもなります。
そこで、海外の事例も参考にして、日本では、消費者団体が被害者に代わって企業などに裁判を起こせる仕組みが2016年10月に誕生したんです。

あーなるほど。
消費者団体が、代わりに裁判を起こすということなんですね。

そうです。日本の制度では、被害者が自ら裁判を起こす必要はありません。

はい。

消費者団体が企業側の責任を認める判決を得て、はじめて、被害者が賠償額を決める手続きに参加をします。

はい

つまり被害者は高額な弁護士費用などを出さずに「勝ち馬に乗る」ことができるわけなんです。
一方で、経済界、企業側は、当初、被害者側がむやみに訴えを起こすと企業が疲弊すると懸念をしました。

うーん(。-`ω-)

そこで、裁判を起こす消費者団体を、国が認定する「特定適格消費者団体」というのに絞っています。

実際にこの制度を使った裁判というのは行われたんですか?

はい。行われました。この制度を使った日本で初めての裁判は、女子や浪人生らの受験生を不利に扱った東京医科大の不正入試問題を巡るものです。

はい(-"-;)

NPO法人「消費者機構日本」が、元受験生の代わりに受験料などの返還を求めたものです。

はい

東京地方裁判所は今年3月、「ひそかに女子らの得点を操作したことは違法だ」として、団体の勝訴判決を言い渡しました。

はい

東京医大は控訴を断念して、元受験生らが参加して、賠償額を決める手続きに移ることになりました。

この賠償の対象になる受験生は、何人ぐらいいるんでしょうか?

これが結果的に賠償の対象は、数千人規模に上る見通しなんです。

はーい。Σ(- -ノ)ノ

NPO法人消費者機構日本の佐々木幸孝副理事長は「泣き寝入りせざるを得ない被害者は、ほかにも大勢いる」

うーん

「その思いを受け止め、今後も闘っていく」と話しています。

はい

この裁判では「得点操作を知っていても受験した人はいるはずだ」と主張した東京医大側に対して

ええ

団体側は、元受験生らが「知っていれば受験しなかった」と心情をつづった書面を幾つも出して、この初戦は消費者側に軍配が上がったかっこうです。

うまく急所を突いたんですね。

そうなんですよ。ちなみに国民生活センターによりますと、2018年度の消費生活相談の件数、およそ、99万1500件なんですが、
今回の制度による裁判は何件あるかといいますと、3件にとどまっています。

そうなんですねー。

裁判を起こせる「特定適格消費者団体」が、東京都と大阪府と埼玉県の合わせて3つしかないことが、制度の利用が伸び悩む一因のようなんです。

そうなんですね。どうしてもっと団体が増えないんでしょうか。

この背景なんですが、国から認定を受けるのに、団体の安定した財政基盤が求められるという事情があるんです。

はい

また、制度の課題として、金銭的なお金の被害は回復できても、生命や身体の被害への賠償とか、精神的苦痛の慰謝料などが認められないことなどもあるようなんです。認定を受けた3つの団体は制度の改善を求める意見書を消費者庁などに出して、救済対象の範囲拡大などを訴えています。

この泣き寝入りせざるを得ない方々が、少しでも多く救われるようになるといいなあというふうに感じますよね。

そうですよね、せっかくの制度、より有効に活用されるといいですね。

はい

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