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2021年03月09日放送

動物園

話題作りを狙ってない「動物園のネコ」…動画再生35万回の人気者も

読売新聞2月16日掲載

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ラジオ版New門 (文字起こしバージョン)

この門を開けばニュースの世界がよりくっきり見えてくる。ラジオ版NEW門ニュースの門です。今回のテーマは「動物園」です。NEW門先月16日掲載の『話題作りを狙ってない「動物園のネコ」…動画再生35万回の人気者も』についてピックアップしてお伝えしていきます。

確かにあの猫の動画って、かわいいですよねー!

癒やされますよね。
中でも「世界最古の猫」マヌルネコや、「砂漠の天使」スナネコなど、動物園に新たな人気者も登場しています。

はい。

たとえば、「那須どうぶつ王国」のマヌルネコは、後脚で立って、展示室のガラスに前脚の肉球を押しつけて「壁ドン」するという、恋愛漫画で男性が女性に迫る場面を連想させる動きで話題になりました。体長は60センチぐらいで、短い足で動き回る姿が愛らしいマルヌネコは、シベリア南部や中央アジアの岩山にいる猫なんです。

そうなんですね。「壁ドン」する猫っていうことで、可愛いですね。

そうなんですよ。これ野生の姿を紹介するテレビ番組が3年前に放映されて人気に火がつきました。園の配信した動画の中には再生回数が35万回に達したものもあるんです。

すごいですね。

また、姉妹園の「神戸どうぶつ王国」(神戸市)でも、植物や岩の陰に身を潜めたり、展示ガラスに近い丸太の上をとてとてと走って、来園者のハートをつかみました。そしてこの2つの園では愛らしいスナネコも注目されています。

うーん。これ話題づくりのために飼育を始めたわけではないんですか?

そうかと思いきや、話題作りを狙ったわけではないそうなんです。
マヌルネコは繁殖や「アジアの森」を再現したエリア整備のために導入したそうで、スナネコの飼育というのも、同じ小型の野生ネコ・ツシマヤマネコの繁殖技術を磨くためだったそうなんです。

へー。

この2つの両園の園長を兼ねる佐藤哲也さんは「ガラス越しに間近で見られる展示の効果かも。小型のネコ科動物がここまで人気になるとは」と驚いています。

そうなんですねー。動物園での展示の仕方というのも大事なんですね?

そのようなんです。イギリス出身の児童文学作家ヒュー・ロフティングは、1925年、「ドリトル先生の動物園」で、「(動物園は)牢屋(ろうや)ではなく、動物の家でなければならない」。と記しているんですが、

はい。

当時の動物園っていうのは、猛獣や珍獣を檻(おり)に入れてコレクションのように展示するところがほとんどだったそうなんです。しかし、自然環境保護の機運が高まって、国際自然保護連合(IUCN)が、1964年に絶滅の恐れがある生物をまとめたレッドリストを作ったり、野生動植物の国際的取引を規制するワシントン条約が1973年に採択されて、ゾウとかライオン、キリンなどの購入が難しくなりました。

はい。動物を保護しようという機運が高まったわけですね。

また、「動物の福祉」という考えも生まれてきて、狭い檻で見せ物にしたり、本来は群れで暮らすゾウなどを1頭で飼うことへの批判も強くなったんです。

なるほど。

そんななか、「希少な種の保存」が動物園の役割として注目をされてきて、日本では少なかった動物がやって来るきっかけにもなっているんです。

はい。

たとえば、将来、絶滅の危険性が高いとされているセスジキノボリカンガルーのメスが去年12月、ズーラシアにいるオスとの繁殖を目的にドイツから「よこはま動物園ズーラシア」にやってきました。

はい。

また、笑ったような顔で「世界一幸せな動物」と呼ばれているカンガルー科の小さい動物・クオッカが、野生では減っている中で、飼育環境の良さとか、有袋類の繁殖の実績が認められまして、埼玉県の「こども動物自然公園」にやってきているんです。

へー!

これ、生息地のオーストラリア以外では、唯一飼育だそうなんです。

そうなんですねー!そういった日本の動物園に、そういうきっかけで珍しい動物が来ることもあるんですね?

そうなんですよ。さらに展示方法の工夫とうもの進んでいます。
たとえば、大阪市の天王寺動物園のアフリカサバンナエリアでは、寝そべっているライオンの向こうをキリンが歩いています。これ、動物の福祉と、自然な形の展示を両立しようということで、飼育エリアを大きな溝で隔てることで2006年に実現をしたものだそうです。

はい。

これっていうのは、世界で広がりつつある、生息地の植生とか地形を再現する、「ランドスケープ・イマージョン」という考え方に基づいていまして、ペンギンとかアシカのエリアでも改修が進んでいるんです。

動物の本来いる場所をイメージしているというですね?

また、アメリカでは、地域の動植物を一緒に展示をして、人との共生関係を学べる施設を作った動物園もあるそうです。関西大学の溝井裕一教授(西洋文化史)は「動物は生息する土地に適応しており、その環境に置かれることで輝く。日本の動物園は変化の途上にある」と話しているんです。

うーん。

まさにドリトル先生の物語から1世紀で、現実が物語に近付いてきた感じですね。

はい。動物園の形も着々と変化しているということなんですねー。

ちなみに、国内の近代的な動物園は、欧米諸国に文化の面で追いつこうと、1882年(明治15年)に開園した上野動物園(東京)に始まります。
全国のさまざまな動物園、水族館が加盟する公益社団法人「日本動物園水族館協会」(JAZA、東京)は、世界的な流れに沿って動物園の四つの役割として、〈1〉種の保存〈2〉教育・環境教育〈3〉調査・研究そして、〈4〉市民のレクリエーションの場というのを掲げています。

役割も多彩なんですねー?

はい。会員の施設向けの規程では、野生ではなく、なるべく飼育されて繁殖した動物を入れることとか、服を着せるといった過度な擬人化の禁止など、本来の習性や形態が正しく表現される展示などを求めているんです。

はい。

このルールを守るためには、職員の飼育技術の向上とか情報収集が欠かせないそうなんですけれど、正しい飼育、展示を実現することで、国際的な信用が得られて、海外からの動物の貸し出しというのが実現するそうなんです。

なるほど。

だから新顔の人気者に日本にいながら出会える陰には、見えない努力の積み重ねがあるわけですね。

うーん。そうなんですねー。人が楽しむだけではなくて、動物だったり自然環境も守る。またその地域を伝えるような役割があるということで、利用する、楽しむ私たちもそのあたりしっかりと理解したいなと思いますね。

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