欧州が「分裂」の危機?3つの「時差」やめ、自国の時間を決めて固定へ
2020年11月10日放送
パナマ船籍「パナマ船籍」の船も「パナマ運河利用」の船も、コロナで減る傾向
読売新聞 10月13日掲載
ラジオ版New門 (文字起こしバージョン)
この門を開けばニュースの世界がくっきり見えてくる。ラジオ版NEW門ニュースの門です。今回のテーマは「パナマ船籍」です。NEW門先月13日掲載の『「パナマ籍」の船も「パナマ運河利用」の船も、コロナで減る傾向』についてピックアップしてお伝えします。
はい。「パナマ船籍」ってニュースでたまに耳にしますよね。
そうですね。あのパナマは、北アメリカ大陸と、南アメリカ大陸の間のちょうど細―くなっているところに
うーん!
ある国ですけれども。中間のね、ところですが、
海難事故などのニュースで「パナマ船籍」という言葉を聞くこともあると思います。
はい。
実は日本の海運各社が保有している、国外で活躍する外航船の6割弱は、船籍、船の国籍がパナマで、
はい。
運河の利用も多くなっていて、税金が著しく軽いタックスヘイブン(租税回避地)としても知られています。
はい。日本の海運会社が船の国籍を他の国にできるんですね。
そうなんです。あの国連海洋法条約というもので、船は、国籍にあたる船籍というのを持つ必要があるんですけれども
ええ。
日本の海運会社などが、所有船の船籍を他国に置くことを「便宜置(ち)籍(せき)船」と呼んでいます。
はい。(・д・)
ちなみに貨物船や客船といった世界の商船のうち、パナマ船籍は1割前後を占めているんですが、日本の海運各社が保有・運用しているおよそ2400隻に限ってみると、その割合57%に達するんです。
そうなんですね。パナマ船籍の割合が大きいですよね?
そうなんですよ。これパナマは、1920年代から自分の国の船籍への誘致というのを始めていて
えぇえぇ。
5年前には日本に事務所も開設しました。
はい。
多くの船の多くの船の船籍として自分の国を登録してもらえば、貴重な外貨の収入にもなりますし。
うーん。(*・`o´・*)
海運会社は、船の登録税とか税の優遇、手続きの簡略化といったメリットがあるわけなんです。
はい
しかし、この新型コロナウイルスは、そんな日本とパナマの関係に変化を促すかもしれません。
そうなんですね?
うん。
あの、以前、重油流出事故を起こした船って
はい。
確かパナマ船籍でしたよね?
今年の8月にインド洋のモーリシャス沖で重油流出事故を起こしたパナマ船籍の貨物船「わかしお」は、中国からブラジルに向かう航海で、太平洋を横断するパナマ運河経由のルートを通らないで、
はい
アフリカ大陸南端の喜望峰を回る航路を選んでいたんですけれども
ええ。
それには理由がありました。
船の幅が50メートルと巨大で、幅49メートルが上限のパナマ運河を通れないからなんです。
船の大きさが理由だったんですね。
で、さらにですね。小さい船でもわざわざ喜望峰回りを選ぶことが増えるかもしれないんです。
そうなんですね?
ええ。その理由は、今年2月から運河の通航料が最大10%上乗せされまして、
ええ。Σ(・o・)
日本の海運業界は、年間40億円を超える負担増が見込まれるからなんです。
はい。
一方で原油の価格は下がって、燃料と航海の日数を余分にかけたとしても遠回りした方が安上がりになるというわけなんですね。
へー。通行料の値上げですか?
はい。一方で、パナマ側にも譲れない事情があるようなんです。
はい。
アメリカと中国の対立とか、コロナの影響で貿易が滞って、今年の春以降、パナマ運河を通る船の数、1割から2割前後も減っているんです。
はい。
運河はパナマの政府機関が管理や運営をして、その通航料の収入というのは、国家予算の8分の1を占めるそうで、
へー。(゚0゚*)
歳入不足が心配な事態なんですね。
はい。
日本政府は9月に値上げの見直しを求めたんですが、その交渉は平行線をたどりました。
どちらにとっても辛い事情ですよね。
かたや値上げされてね。かたや通る船が減っているっていうね。
はい。
そんな事情なんですが、新型コロナで各国の財政が厳しくなるなかで、タックスヘイブンに風当たりが強まっています。
はい
欧州連合(EU)は、パナマなど十数か国・地域に拠点を持つ企業に対して、コロナで業績が悪化しても財政支援の対象外とするという方針を打ち出したんです。
はい。
たとえば4月に経営破綻したオーストラリアの航空会社2位のヴァージン・オーストラリアは、関係者によるタックスヘイブンの活用というのを理由に、政府が支援に消極的だったと指摘されています。
はい。
「世界的に租税回避地タックスヘイブンへの包囲網が強まって、パナマ経済への影響も避けられない」との見方もでています。
そんな中でパナマ船籍の船への影響というのは、どうなんですか?
はい。このパナマ船籍にも、逆風が吹いているんです。
はい。
この春以降、感染防止を理由に各国から上陸が認められないで、
ええ。
世界で数十万人の船員が船上で数か月も足止めされています。
うーん。
公海、公の海の上での船というのは、船籍国が原則、管轄権を持っていまして、船の上でこうした問題が発生した際にはその国が対処を求められます。
うーん。
とはいっても人口400万人余りの小さな国のパナマは、当事者として十分な対応が難しくて、世界の海運会社や船員に、船籍を小国に置くリスクが改めて認識されたようなんです。
なるほどー。そうすると日本の海運会社への影響も大きそうですね?
そうなんです。実は、日本はコロナ禍の前から徐々に「脱パナマ依存」を進めていたんです。
はい。
日本の海運会社が持っている保有・運用する船のうち、日本船籍の割合というのは、1972年に7割を超えていたのに、2000年代半ばには1割未満、なんと九十数隻まで減っていたんですけど
はい。(。-`ω-)
このままだと紛争などが起きた時の非常時に、船籍の国が、その船を徴用するよと決めた場合、
ええ。
日本はその船を使えないで原油や食料などの輸送手段を失うという可能性があるからなんですね。
そっか。それは困りますよね。
ですよね。そこで政府は、2008年から日本船籍を増やすように海運各社に働きかけをして、去年には273隻まで回復してます。
はい。
最終的に450隻まで増やす目標で、その分、パナマ船籍は取って代わられる公算が大きくなっているんです。
日本とパナマの今後の関係も、そうなると気になりますね。
うーん。そうなんですよ。海運の要所でもあるパナマ運河。歴史的にも地政学的にも重要性が高いものです。
はい。
あの、かつては、太平洋戦争のとき、日本軍が爆破を計画しまして
ええ
運河の設計を担った日本人技師に協力を求めたものの、断られて未遂に終わったという逸話もあるそうなんですけれども。
はい。
世界を代表する二つの海洋国家の絆、コロナ禍で正念場を迎えているようです。
うーん。まあ、外国との交流とか関係性っていうのはほんとにいろんな場面、バランスで保たれているんだな。というのが実感しましたし、
はい。
それが、コロナ禍でまた形を変えていくのかもしれない。っていう風な感じがしますね。
パナマ船籍っていうキーワードで見るとね、そういったことがまた見えてきますよね。
そうですね。