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2020年08月11日放送
遺体の解剖新人ゼロ 法医学教室の「異状」
読売新聞 7月14日掲載
ラジオ版New門 (文字起こしバージョン)
「この門を開けばニュースの世界がよりくっきり見えてくる」ラジオ版NEW門 ニュースの門です。今回のテーマは「遺体の解剖」です。重そうに聞こえるテーマですけれども、重要性が高まる一方で、いろんな課題というもの見え隠れしているんです。NEW門先月14日掲載の『新人ゼロ 法医学教室の「異状」』についてピックアップしてお伝えします。
うーん。ドラマなどにもなりましたけれども、法医学って遺体を解剖して、その死因だったり、真実に迫っていったりするものですよね?
そうですね。たとえば、人気サスペンスドラマ「法医学教室の事件ファイル」では、名取裕子さん演じる法医学者が、遺体のわずかな痕跡から事件を解決していきますけども
はーい。
病死とか事故、自殺、それとも殺人か。亡くなった人の死因を究明する解剖の重要性が高まっているんです。
はーい。(-ω- )
実際の解剖は明らかな病死や老衰でない「異状死」のうち、警察や自治体などが必要と判断した場合に行われます。
はい。
大きく分けると犯罪捜査が目的の「司法解剖」と、感染症予防など公衆衛生が目的の「行政解剖」の二つがあって
はい。
主に大学の法医学教室で行われています。
この「異状死」のうち、
はい。
実際解剖される割合というのはどのぐらいなのでしょうか?
これがですね、実は日本国内の解剖率というのはヨーロッパ諸国よりも低いままで、警察庁によりますと、昨年の全国の異状死およそ17万件のうち、およそ2万件で解剖が行われて
はい。
解剖率はおよそ12%となっています。
海外では2011年の調査報告で、スウェーデンやフィンランドがおよそ80%~90%、
はい
イギリスやオーストラリアがおよそ50%と高く、日本は遠く及んでいません。
体の傷や感染症の影響などの異変を見落とせば、犯罪が闇に葬られたり、感染の拡大を招く恐れもあります。
はい
しかしながら解剖の実施状況は全国でバラツキがあるんです。
どうして、この実施状況にバラツキがあるんでしょうか。
解剖率を都道府県別に見ると、兵庫36%、神奈川35%、東京17%に対して、本県群馬や、埼玉や広島など10県は5%未満と、地域格差も大きくなっているんです。
はーい。
司法解剖は国の予算で全国一律で行われるので、バラツキの原因は、自治体が公衆衛生目的で行う行政解剖の方にあるようなんです。
はい。
この行政解剖は主に自治体の予算で行われています。東京23区や大阪市、神戸市などには「監察医制度」というのがあって、医師が常勤したり、設備も充実しているんですが、
はい。
地方では大学の多くで法医学に関わる人や機材が不足していまして、日本法医学会によりますと、全国のおよそ80の大学法医学教室の多くで、教員の医師などが定員割れしている状態なんです。
あーそうなんですね。困った状態ですよねー。
そうなんです。
タイトルにあった通り
ええ。
「新人ゼロ」。その新人の医師の方がゼロってところもあるんですか?
そうなんですよ。ちなみに、福島県では、過去7年間、法医学教室に入った新人医師がいないということなんです。
そうなんですねー。
福島県立医科大学の黒田直人教授は「地方では事実上、法医学者の職場は大学だけ。若い医師にとって魅力的ではない」と明かしています。
うーん。地域の格差による影響というのも気になりますねー。
はい。新型コロナウイルスへの対処でも、地域格差の影響が出ました。
地方では感染防止設備が整っていなくて、患者の遺体を受け入れられない大学も少なくなかったそうです。
はい。( ̄ヘ ̄;)
歴史を振り返ると、ヨーロッパなどでペストが大流行した14世紀頃に、西欧では不審死をした人の遺体がすでに解剖されていました。
はい。
15世紀以降も解剖は盛んに行われて、西洋医学の礎が築かれたんです。
千葉大法医学教育研究センターの石原憲治特任研究員によりますと、欧米では「まず解剖して死因を調べ、その結果を犯罪捜査や公衆衛生に生かす」というシンプルな考えで、解剖は国などの専門機関が一手に担っているそうなんです。
欧米は解剖に対して積極的な感じなんですね。
そのようなんですね。一方で日本は歴史的に出遅れました。あの杉田玄白らが罪人の遺体解剖を見て「解体新書」を出したのは1774年です。江戸後期になってからです。
はーい。
司法解剖は明治期にドイツから伝わって、行政解剖は戦後の連合国軍総司令部(GHQ)の指示に由来しています。
はい。
そしてこの流れというのは現在まで引き継がれて、解剖は目的別に分かれたままなんです。さらに関係機関も司法解剖は警察や検察、行政解剖は都道府県など多岐にわたっていまして
はい。
千葉大学の石原特任研究員は「複雑な制度が解剖率上昇の足かせになっている」と説明しています。
欧米とはずいぶん違うんですね。
うーん。
何か対策というのはあるんでしょうか?
はい。こうした現状を変えようと、今年4月に施行されたのが「死因究明推進基本法」という法律です。
はい。
法医学分野の人材育成や設備の充実化を進めて、「専門機関」の整備も検討するよう促しています。
はい。
龍谷大学の福島至教授は「国が主導して専門機関の創設に動き、死者の情報を悲劇の再発防止に生かすべきだ」と強調しています。
解剖によって犯罪が明らかになるケースもあるということですよね?
そうですねー。なお、司法解剖と行政解剖に加えて
はい。
2013年から、犯罪性が低くても、警察署長の権限で、死因や身元調査のための「調査法解剖」というものも行えるようになりました。
はい。
この背景には、「病死」などとされて事件性や犯罪死の見逃しが相次いだことがあります。
うーん。(。-`ω´-)
警察庁によりますと、この調査法解剖の実施件数は徐々に増えていまして
はい。
たとえば、風呂場で溺死したとされた幼児を解剖して、暴行の痕跡が見つかって事件化されたケースというのもあるそうです。
そうなんですねー。真実を掘り起こすという意味でもその解剖の重要性が高まってきている中で、課題の解決も進めていけるといいですよね。
そうですね。